Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 167.285 Zeichen · 330 Bildschirme
「そんな、――」と玄四郎は口ごもった、「しかしそんな、三十万石を与えるなどということを、実際にお二人がしたのだろうか」
「証書がとり交わされたことは、わたくしが現に見ていました」
「貴女が、見たんですって」
「一枚は殿さま、一枚は兵部さまが、お互いの手から手へ渡すのを拝見しました」
「人払いもせずにですか」
「殿さまはああいう御気性ですし、わたくしたちはお次におりますから、たいていのことは見えもし聞えもしますの」
玄四郎は茶碗を取った。
「その証書は」と彼は軽い口ぶりで云った、「その証書があれば、柿崎さんは満足されるんですね」
「わたくしにはできません、以前のわたくしなら、盗み出したかもしれませんけれど、もう二度とそんなことは致さないつもりです」
「ちょっと障子をあけましょう」と玄四郎は立ちあがった。
玄四郎は窓の障子をあけ、そこに立って、やや暫く外を眺めやった。ひろい池の水面が、冬の暖かい午後の陽にきらめいていて、蓮の、枯れてしおれた葉を付けたものや、二つに折れたものが、そのきらめく水面に、淡墨で描いたような、複雑な模様を映していた。
「もしも貴女が、柿崎どのの手かられて、平安な暮しにはいりたいと思うなら」