Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.724 Zeichen · 355 Bildschirme
」
次郎は、曾根少佐が自分に対する好意からそんなことを言っている、とはむろん思わなかった。
(ついさっきまで、西山教頭と二人で自分の方を見ながら何を話しあっていたのだ。)
彼は、そう反問してやりたいぐらいだった。
「ご用はそれだけですか。」
彼はまともに少佐を見あげてたずねた。皮肉以上のつめたさである。
「う、ううむ、――」
と、少佐は、それまでひねりつづけていたひげから、急に指をはなした。その指は、ばねのとまった機械人形の指ででもあるかのように、ひげの先端にぴたりととまって動かなかった。
次郎は平然として返事をまっている。
「そうだよ。用事はそれだけだよ。しかし是非にとは言わん。来たくなけりゃあ、来なくてもいいんだ。」
少佐自身では、怒った調子の中に、言外の意味をふくませたつもりで言った。次郎には、しかし、却ってそれが滑稽にきこえた。彼は内心ひそかに勝利感を味わいながら、
「きょうは、僕おたずね出来ません。」
「どうして?」
「朝倉先生をおたずねするんです。」
少佐の眼がぎろりと光り、カイゼルひげがぴりぴりとふるえた。次郎は、少佐の顔は笑っている時よりも怒っている時の方がよほど好感がもてる、と思った。