Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.724 Zeichen · 355 Bildschirme
「奥さんでいらっしゃいますか。」
と、朝倉夫人が座ぶとんをすべって初対面のあいさつをしたが、くどくない、要領のいいあいさつだった。
夫人のあいさつがすんだあとで、先生もあいさつした。
「ご主人には始終ご厄介になっています。きょうは大変お手数をかけまして。」
そう言ったきりだった。
お芳は二人のあいさつに対して、「はい」とか「いいえ」とか「どうぞ」とか言うだけで、自分からはほとんど口をきかなかった。しかし、べつにまごついているようなふうでもなかった。かなり日にやけた頬に、例の大きなえくぼが柔かいかげを作っているのが、先生夫妻の眼には、いかにも素朴にうつった。
あいさつがすむと、もう古くからの知りあいででもあるかのような気安さが、二組の夫婦の間に流れていた。
「すぐおビールにいたしましょうか、よく冷えていますけれど。」
お芳が言った。
「うむ。奥さんにはサイダーをね。……しかし、先生、ちょっと汗をおふきになりませんか。風呂はわかしておりませんが、井戸端で行水でも。」
俊亮が言うと、
「そう。では、ちょっと失礼します。しかし、井戸端より川の方がいいんです。」
朝倉先生は、袴をぬぐと、ひとりで表の方に出て行った。