Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.724 Zeichen · 355 Bildschirme
いやしくも一人の人間が血を流してつづった願いだ。それがまるで無視されるという道理はない。実は相手が役人ではだめだというが、たといつまらん役人でも、いやつまらん役人であれはあるほど、血書をつきつけられてそれを默殺するだけの勇気はあるまい。彼にはそんなふうにも思えるのだった。それは、満州事変このかた、軍部に対する血書の歎願といったようなものが青年の間に流行し、それが新聞に発表されるごとに、たいてい役人がきまって感激的な感想をもらしていたのを、よく知っていたからであったのかも知れない。
俊亮は、彼の気持にはとんちゃくなしに、
「しかし、せっかく書いたものをほごにするにも及ぶまい。まあ出すだけは出してみるさ。すこしなまぐさいだけで、べつにわるいことではないからな。まあ、しかし、これという返事は得られないものだと思った方がいいね。」
「まるで返事もしないって、そんなことがありますか。」
「そりゃあ、あるとも。多分学校といっしょになって秘密に葬ろうとするだろうね。」
「秘密になんか出来っこありません。生徒の中に署名するものが何人もあるんですから。」
「役人の秘密というのは、誰でも知っていることを知らん顔することなんだよ。