Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.724 Zeichen · 355 Bildschirme
そして、彼自身でそれを少しも変だと思わないところに、彼のひそかな恋情がひそんでおり、彼の将来の運命に何かの影をなげる因子が芽を出しかけているともいえるであろう。
「次郎さん、おこったの。」
道江はねころんでいる次郎の横顔を見て、たずねた。
「おこってやしないさ。しかし、道江さんは考えかたが浅薄すぎるよ。人間はもっと真剣でなくっちゃあ。」
次郎は、そう言ってもう半ばからだを起していた。
「すまなかったわ。でも、あたし、何だか心配なの。次郎さんにはどこか烈しいところがあるんですもの。」
次郎は苦笑した。子供のころのことや、中学に入学したてに、五年生を相手に戦ったことが、心によみがえって来たのである。同時に、彼は、大垣前校長が口ぐせのように言っていた「大慈悲」という言葉を思いおこし、それを今度の朝倉先生の問題の場合にあてはめたら、自分たちはどういう態度に出るべきであろうか、と考えてみた。しかし、いくら考えてみても、その二つが彼の心の中でしっくり結びついて来なかった。ただ、朝倉先生の留任は「大慈悲」の精神にかなうが、万一にもそのための運動がストライキにまで発展したら、どんな立場から見ても、それにかなわないということだけが、はっきりしたのである。