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Japanische Klassiker mit Furigana

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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.724 Zeichen · 355 Bildschirme

Aozora Bunko

ところが、茶店のまえをとおり過ぎて四五間行っても、誰も声をかけるものがなかった。彼は安心とも失望ともつかぬ変な気持になり、われしらずうしろをふりむいた。

すると、馬田が茶店のかど口に立って、こちらを見ていた。そのしまりのない口は冷笑でゆがんでいる。次郎は、しかたなしに立ちどまった。

二人は、かなり永いこと、無言のまま顔を見あっていた。どちらからも歩みよろうとも、言葉をかけようともしない。次郎は、しかし、そのうちに、いつまでもそうしているのがばかばかしくなって来た。彼は思いきって馬田に背を向けようとした。すると、馬田がとうとう口をきった。

「本田、ずるいぞ。」

「何がずるいんだ。」

と、次郎は、また馬田の方にまともに向きなおった。

「僕がここにいること、君は知っていたんだろう。」

「知っていたさ。」

次郎はごまかさなかった。ごまかすどころか、そう答えることによって、皮肉な喜びをさえ味わっていたのである。

「知っていて、なぜだまって通りぬけるんだ。」

「用がないからさ。」

「なに、用がないから?」

馬田は、左肩をまえにつき出し、両肱をいからせながら、次郎の方によって来た。