Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.443 Zeichen · 398 Bildschirme
かれは赤松の幹によりかかって、手紙をもう一度はじめから読みかえした。それは最初の時よりはるかに時間をかけた、念入りな読みかただった。そして読みおわると、それをかくしにつっこみ、腕組みをして、しばらくじっと考えこんでいたが、急に何か決心したらしく、大いそぎで自分の居室に帰って行った。居室に帰ると、すぐ机の上に便箋をひろげた。そして、もう一度考えこんだあと、ペンを走らせた。
「手紙見た。感謝する。しかし、道江の気持ちは、ぼくにはわかりすぎるほどわかっているのだ。君がとろうとする方法は、ただ道江を悲しませるばかりだろう。それは同時に、ぼくにとっても、たえがたい苦痛なのだ。ぼくは、君がぼくに対して注ぐ愛情を道江に対して注ぐことを心から希望する。それは同時に、ぼくに対する大きな愛情でもあるのだ。」
かれはそれを封筒に入れて封をした。が、上書きを書こうとして、何かにはっと気がついたように、ペンをにぎったまま、その封筒を見つめた。
しばらく考えたあと、かれはその封筒を、手紙ごとめりめりと裂き、もみくちゃにし、さらにすたずたに裂いて屑籠に投げこんだ。
それからまた、便箋を前にして、じっとどこかを見つめていたが、やがてかれの頬には冷たい微笑が影のように流れた。