Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.443 Zeichen · 398 Bildschirme
こんなふうでは、自分は、里子から帰って来た幼年時代と少しも変わったところがないではないか。いや、あのころの自分は、まだ今ほどには見ぐるしくはなかった。なるほど、自分はあのころ、虚言、策略、暴力、偽善、そのほかありとあらゆる卑劣な手段を毎日もてあそんでいた。しかし、それらはすべて、自分の心の底からの願い、――自分にとっては生きるということと全く同じ意味をもつほどの、せっぱつまった願いをみたすために、自然が自分に教えてくれた手段だったのだ。自分は何よりもまず母の愛を求めていた。また、母をはじめ、肉親の人たちの自分に対する公平な待遇を求めていた。それはあのころの自分にとって、決して不当な願いではなかったはずなのだ。いや、不当の願いでないどころか、それはかえって、自分を虚偽や、策略や、暴力や、偽善から救い、正常な人間になるために、絶対に必要な願いであったとさえいえるのだ。その意味で、あのころの自分は、無意識的ではあったにせよ、自分に対してきわめて忠実であったと言えるのではないか。しかるに今はどうだ。今の自分のどこに少しでも真実さというものが残されているのだ。