Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.443 Zeichen · 398 Bildschirme
何か話がある人は塾長室にやって来たまえ。」
と言って、すぐ塾長室にはいり、何か書きものをはじめたのだった。
こうして、雪は塾生たちから外出の楽しみを奪ったが、それは必ずしもかれらの気持ちを冷たくしたとばかりは言えなかった。考えようでは、何のきまった行事もない、最も自由な日を選び、塾長夫妻をはじめ、全員を一堂にとじこめることによって、みんなの心をいっそうあたためてくれたとも言えるのであった。その証拠には、塾生たちは、だれがだれを誘うともなく、いつの間にか一人のこらず広間に集まり、朝倉先生夫妻を中心に、のびのびと話しあったり、かくし芸を披露したり、友愛塾音頭を踊ったりしていたのである。
次郎も、むろん広間に顔を出していた。そして、オルガンをひくとか、そのほか、こんな場合にかれでなくてはできないような役目は、いつもと変わりなく引きうけた。しかし、それがこの日のかれの気持ちにぴったりしていなかったことは、いうまでもない。かれは、ただ、自分の本心をだれにも見すかされないために、みんなと調子をあわせていたにすぎなかった。そして、そうした虚偽がさらに新たな苦汁となってかれの胸の中を流れ、つぎからつぎに不快な気持ちをますばかりだったのである。