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Japanische Klassiker mit Furigana

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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.443 Zeichen · 398 Bildschirme

Aozora Bunko

かれはいくらか救われた気持ちだった。

かれの視線は、おのずと、朝倉夫人のほうにもひかれた。夫人の横顔は、いつもにくらべると、いくぶん青ざめており、その視線は、つつましく膝の上に重ねている手の甲におちているように思われた。かれは、朝倉夫人のそんな様子を見ると、つい眼がしらがあつくなって来るのだった。

かれは、しかし、そうしているうちに、いくらか自分をとりもどすことができ、眼を来賓席のほうに転じた。すると、そこには、当惑して天井を見ている顔や、にがりきって演壇をにらんでいる顔がならんでいた。しかし、どの顔よりもかれの注意をひいたのは、相変わらず木像のように無表情な荒田老の顔と、たえず皮肉な微笑をもらして塾生たちを見わしている鈴田の顔であった。

鈴田の顔を見た瞬間、次郎は、自分にとってきわめてたいせつなことを、いつの間にか忘れていたことに気がついて、はっとした。中佐の言葉に対する塾生たちの反応、それを見のがしてはならない。できれば一人一人の反応をはっきり胸にたたみこんでおくことが、これから朝倉先生に協力して自分の仕事をやって行く上に何よりもたいせつなことではないか。