Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 159.223 Zeichen · 320 Bildschirme
正木の家に帰ると急に空腹を感じて、しきりに飯をかきこんだ。そして誰もたずねもしないのに掃除当番でおそくなったのだ、と何遍も言訳をした。むろんそれにしては時間がおくれ過ぎていたが、別に誰も怪しむものはなかった。
翌日は薬を貰いに行く日だった。次郎は何となく行きづらいような、それでいて早く行ってみたいような気がした。薬局の外には、六七人の人が待っていたが、彼が敷居をまたぐ音がすると、すぐ窓から春子の眼がのぞいた。そして、
「次郎ちゃん? ここでも二階ででもいいから、しばらく待っててね。今日は、ほら、こんなに沢山待っていらっしゃるから。」
次郎はほっとした。そしてすぐ薬局の中に這入って、例のとおり春子の調剤の手つきを見まもった。
「次郎ちゃんは、昨日默って帰っちゃったのね。あたしが怒ったからでしょう。堪忍してね。」
春子は微笑しながら言った。しかし東京行きのことは、みんなの調剤が終るまで一言も言わなかった。そして次郎が薬壜を受取って、部屋を出ようとすると、
「あたしがお薬をこさえてあげるの、これでおしまいよ。」
と言った。その声は少しさびしかった。次郎はふりかえって、じっと春子の顔を見た。