Japanische Klassiker mit Furigana
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ししゃのしょ
死者の書
折口 信夫
Lesen Sie 死者の書 (ししゃのしょ) von 折口 信夫 (おりくちしのぶ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 62.340 Zeichen · 126 Bildschirme
十七
十七
彼岸中日 秋分の夕。朝曇り後晴れて、海のように深碧に凪いだ空に、昼過ぎて、白い雲が頻りにちぎれちぎれに飛んだ。其が門渡る船と見えている内に、暴風である。空は愈々青澄み、昏くなる頃には、藍の様に色濃くなって行った。見あげる山の端は、横雲の空のように、茜色に輝いて居る。
大山颪。木の葉も、枝も、顔に吹きつけられる程の物は、皆活きて青かった。板屋は吹きあげられそうに、煽りきしんだ。若人たちは、悉く郎女の廬に上って、刀自を中に、心を一つにして、ひしと顔を寄せた。ただ互の顔の見えるばかりの緊張した気持ちの間に、刻々に移って行く風。西から真正面に吹きおろしたのが、暫らくして北の方から落して来た。やがて、風は山を離れて、平野の方から、山に向ってひた吹きに吹きつけた。峰の松原も、空様に枝を掻き上げられた様になって、悲鳴を続けた。谷から峰の上に生え上って居る萱原は、一様に上へ上へと糶り昇るように、葉裏を返して扱き上げられた。
家の中は、もう暗くなった。だがまだ見える庭先の明りは、黄にかっきりと、物の一つ一つを、鮮やかに見せて居た。
郎女様が――。
誰かの声である。皆、頭の毛が空へのぼる程、ぎょっとした。