Japanische Klassiker mit Furigana
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ししゃのしょ
死者の書
折口 信夫
Lesen Sie 死者の書 (ししゃのしょ) von 折口 信夫 (おりくちしのぶ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 62.340 Zeichen · 126 Bildschirme
穆々たる宮の内の明りは、ほのかな香気を含んで、流れて居た。昼すら真夜に等しい、御帳台のあたりにも、尊いみ声は、昭々と珠を揺る如く響いた。物わきまえもない筈の、八歳の童女が感泣した。
「南家には、惜しい子が、女になって生れたことよ」と仰せられた、と言う畏れ多い風聞が、暫らく貴族たちの間に、くり返された。其後十二年、南家の娘は、二十になっていた。幼いからの聡さにかわりはなくて、玉・水精の美しさが益々加って来たとの噂が、年一年と高まって来る。
姫は、大門の閾を越えながら、童女殿上の昔の畏さを、追想して居たのである。長い甃道を踏んで、中門に届く間にも、誰一人出あう者がなかった。恐れを知らず育てられた大貴族の郎女は、虔しく併しのどかに、御堂御堂を拝んで、岡の東塔に来たのである。
ここからは、北大和の平野は見えぬ。見えたところで、郎女は、奈良の家を考え浮べることも、しなかったであろう。まして、家人たちが、神隠しに遭うた姫を、探しあぐんで居ようなどとは、思いもよらなかったのである。唯うっとりと、塔の下から近々と仰ぐ、二上山の山肌に、現し世の目からは見えぬ姿を惟い観ようとして居るのであろう。