Japanische Klassiker mit Furigana
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ししゃのしょ
死者の書
折口 信夫
Lesen Sie 死者の書 (ししゃのしょ) von 折口 信夫 (おりくちしのぶ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 62.340 Zeichen · 126 Bildschirme
灯台も大きなのを、寺から借りて来て、煌々と、油火が燃えて居る。明王像も、女人のお出での場処には、すさまじいと言う者があって、どこかへ搬んで行かれた。其よりも、郎女の為には、帳台の設備われている安らかさ。今宵は、夜も、暖かであった。帷帳を周らした中は、ほの暗かった。其でも、山の鬼神、野の魍魎を避ける為の灯の渦が、ぼうと梁に張り渡した頂板に揺めいて居るのが、たのもしい気を深めた。帳台のまわりには、乳母や、若人が寝たらしい。其ももう、一時も前の事で、皆すやすやと寝息の音を立てて居る。姫の心は、今は軽かった。たとえば、俤に見たお人には逢わずとも、その俤を見た山の麓に来て、こう安らかに身を横えて居る。
灯台の明りは、郎女の額の上に、高く朧ろに見える光りの輪を作って居た。月のように円くて、幾つも上へ上へと、月輪の重っている如くも見えた。其が、隙間風の為であろう。時々薄れて行くと、一つの月になった。ぽうっと明り立つと、幾重にも隈の畳まった、大きな円かな光明になる。
幸福に充ちて、忘れて居た姫の耳に、今宵も谷の響きが聞え出した。更けた夜空には、今頃やっと、遅い月が出たことであろう。