Japanische Klassiker mit Furigana
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えどのかじゅつ
江戸の火術
野村 胡堂
Lesen Sie 江戸の火術 (えどのかじゅつ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.929 Zeichen · 36 Bildschirme
「それを聴いて安心した。――が、少しばかり仔細がある。試し撃のすむまで、貴公は縛られていて貰い度い」
稲富喜三郎変なことを言い出しました。
「何を言う、稲富」
井上半十郎が反抗する隙もありません、其処に手伝っていた二人の荒くれ男、稲富喜三郎と力を協せて、あッと言う間に半十郎を縛り上げてしまいました。腕は多少あっても、非力で華奢な半十郎、三人の大男に捕まっては、何んの抵抗も出来ません。
「それでよし、お前達二人は、的の方へ行って見ているが宜い、あと丁度一刻(二時間)経てば撃つ、あまり的の側に寄って怪我をするな」
「心得ました」
二人の助手――武士とも山樵ともつかぬ荒くれ男は、一礼して向う長根の的の方へ行ってしまいます。谷を隔てて五十丁と言いますが、歩いては二里にも余るでしょう。暫らく、二人は黙って相対しました。砲架の上に載せた、巨大な大筒を中に、縛られた井上半十郎と、試し撃の成績ばかりに気を揉む稲富喜三郎と、別々な心持で、初秋の山一つ彼方に、白々と見える的のあたりを眺めて居たのです。
すぐ後ろの小屋の蔭からは、時々白い顔が覗きました。この一と月、あまり半十郎の前に姿を見せなかった繁代が、このキナ臭いほど緊張した、クライマックスの空気に誘われて、それとなく、二人の様子を見ているのでしょう。