Japanische Klassiker mit Furigana
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ぬまふじん
沼夫人
泉 鏡花
Lesen Sie 沼夫人 (ぬまふじん) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 39.541 Zeichen · 78 Bildschirme
その葉が大きく上にかぶさる、下に彳んで熟と見た、瞳が霑んで溜息して、
「立さん、立さん、」
と手を取ったまま、励ますように呼掛けて、
「憎らしいではありませんか。あの芭蕉が伸拡がって、沼の上へ押覆さるもんですから、御覧なさい。出汐をこうして隠すんですもの。空へ上れば峰へ伸る、向うへかかれば海へ落ちて、いつ見ても、この水に、月の影が宿りません。
可哀相に。いつかの、あの時、月の影さえ見えたらばと、どんなに二人で祈ったでしょう。身につまされて涙が出る。まあ、この沼の暗いこと! 外は、あんなに月夜だのに。……」
翳せばその手に、山も峰も映りそう。遠い樹立は花かと散り、頬に影さす緑の葉は、一枚ごとに黄金の覆輪をかけたる色して、草の露と相照らす。……沼は、と見れば、ここからは一面の琵琶を中空に据えたようで、蘆の葉摺れに、りんりんと鳴りそうながら、一条白銀の糸も掛らず、暗々として漆して鼠が駈廻りそうである。
「先刻、貴下がなすったついでに、もうちっと切払って下されば可かったのねえ。」
ただ等閑に言い棄てたが、小松原は思わず拳を握った。生れて以来、かよわきこの女性に対して、男性の意気と力をいまだかつて一たびもために露わし得た覚がない。