Japanische Klassiker mit Furigana
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うみのほとり
海のほとり
Lesen Sie 海のほとり (うみのほとり) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.015 Zeichen · 13 Bildschirme
一
一
……雨はまだ降りつづけていた。僕等は午飯をすませた後、敷島を何本も灰にしながら、東京の友だちの噂などした。
僕等のいるのは何もない庭へ葭簾の日除けを差しかけた六畳二間の離れだった。庭には何もないと言っても、この海辺に多い弘法麦だけは疎らに砂の上に穂を垂れていた。その穂は僕等の来た時にはまだすっかり出揃わなかった。出ているのもたいていはまっ青だった。が、今はいつのまにかどの穂も同じように狐色に変り、穂先ごとに滴をやどしていた。
「さあ、仕事でもするかな。」
Mは長ながと寝ころんだまま、糊の強い宿の湯帷子の袖に近眼鏡の玉を拭っていた。仕事と言うのは僕等の雑誌へ毎月何か書かなければならぬ、その創作のことを指すのだった。
Mの次の間へ引きとった後、僕は座蒲団を枕にしながら、里見八犬伝を読みはじめた。きのう僕の読みかけたのは信乃、現八、小文吾などの荘助を救いに出かけるところだった。「その時蜑崎照文は懐ろより用意の沙金を五包みとり出しつ。先ず三包みを扇にのせたるそがままに、……三犬士、この金は三十両をひと包みとせり。もっとも些少の東西なれども、こたびの路用を資くるのみ。