Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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うみのほとり

海のほとり

芥川 竜之介

Lesen Sie 海のほとり (うみのほとり) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.015 Zeichen · 13 Bildschirme

Aozora Bunko

道は庭先をだらだら下りると、すぐに浜へつづいていた。

「泳げるかな?」

「きょうは少し寒いかも知れない。」

僕等は弘法麦の茂みを避け避け、(滴をためた弘法麦の中へうっかり足を踏み入れると、ふくら脛の痒くなるのに閉口したから。)そんなことを話して歩いて行った。気候は海へはいるには涼し過ぎるのに違いなかった。けれども僕等は上総の海に、――と言うよりもむしろ暮れかかった夏に未練を持っていたのだった。

海には僕等の来た頃は勿論、きのうさえまだ七八人の男女は浪乗りなどを試みていた。しかしきょうは人かげもなければ、海水浴区域を指定する赤旗も立っていなかった。ただ広びろとつづいた渚に浪の倒れているばかりだった。葭簾囲いの着もの脱ぎ場にも、――そこには茶色の犬が一匹、細かい羽虫の群れを追いかけていた。が、それも僕等を見ると、すぐに向うへ逃げて行ってしまった。

僕は下駄だけは脱いだものの、とうてい泳ぐ気にはなれなかった。しかしMはいつのまにか湯帷子や眼鏡を着もの脱ぎ場へ置き、海水帽の上へ頬かぶりをしながら、ざぶざぶ浅瀬へはいって行った。

「おい、はいる気かい?」

「だってせっかく来たんじゃないか?」