Japanische Klassiker mit Furigana
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かせいのまじゅつし
火星の魔術師
蘭 郁二郎
Lesen Sie 火星の魔術師 (かせいのまじゅつし) von 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 151.120 Zeichen · 302 Bildschirme
そして、白眼に絡まった蜘蛛の巣のような血脈、林立した火箸のような睫毛、又その真中には、何かしらトテツもない恐ろしい影を写している虚黒な眸があった……。
洵吉は、一瞬も、面と向って直視することが出来なかった。
そして危うく眼を床に落して、息をついた彼は、すぐ次の壁に尨大な脛を発見して、又驚かなければならなかった。それは普通の四五倍もある大きな、毛むくじゃらな脛だけが、天井からぶら下って、風もないのに、その脛の毛がむじむじと縺れあっているのだ。
そして又次には腕だけ、腹だけ、或は耳だけ、乳だけの、ずたずたに切られた巨大な人間の各部分が、薄暗い空間に浮いて、音もなく蠢めいているのだ。
そうしてそれらの蠕動は、次第に力づいて来ると、夕闇の泌みこんだ部屋の中を乗越えて、寺田の周囲に泳ぎ寄って来るのであった。
彼は、余りのことに、力の抜けた体を、やっとドアーにもたせかけた。
二
もし、その時、水木が、
「もうすぐだ、一寸、まってくれ……」
と、次の部屋から声をかけてくれなかったら、寺田は、当然、一目散にこの化物屋敷のような水木の家を、飛出していたに違いない……又、あとから考えてみれば、この時、一目散に遁出してしまっていた方が、寺田にとって、どんなに幸福だったかしれないのだが……。