Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かせいのまじゅつし

火星の魔術師

蘭 郁二郎

Lesen Sie 火星の魔術師 (かせいのまじゅつし) von 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 151.120 Zeichen · 302 Bildschirme

Aozora Bunko

吉ならばよし。凶なら凶で……

(たとえこの一座が解散したって、俺は葉子と離れないぞ……)

(もし別れるのなら、一層のこと、葉ちゃんを殺って……)

とまで思いつめてはいても、矢ッ張、「明日」が気になるのだ。普通ならばあすのことなどどうにも仕様のないことなのだが、幸か不幸か、黒吉は、未来を覗く術を、――それは恐ろしい「未来」への冒涜であろうけれど――どうしたはずみかで、身につけてしまったのだ。

……たまり兼ねた黒吉は、誰にも知れぬように、こっそりと床を抜け出すと、音を忍ばせながら高い小屋の天井へ上って行った。

上り切ってみると、そこはいつもとは全く違った風景であった。人ッ子一人いないガランとした観客席は、白々しく冴え返って、頭の上には、天幕の継目が夜風にハタハタとはためいていた。

遙か眼の下、谷底のような舞台には、黄色ッぽい五燭の電球が、タッタ一つ微かな輪を描いているきりであった。

黒吉は、捲上げられてあるブランコを垂らすと、身軽く飛乗って、一つ一つ、数えるように、力を罩めて、ゆり初めた。

ブランコの描く円弧は、次第に拡大されて来、加速度が加わって来ると共に、深閑とした天幕小屋は、びっくりするような音をたてて軋むのであった。