Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かせいのまじゅつし

火星の魔術師

蘭 郁二郎

Lesen Sie 火星の魔術師 (かせいのまじゅつし) von 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 151.120 Zeichen · 302 Bildschirme

Aozora Bunko

「葉子!」

片足と、空を飛ぶことばかり考えていて、忘れかけていた名前を、びくッと思い出した。殆んど同時に、ドアーが押あけられると、静かに這入って来たのは、期待した葉子ではなく、あの由子の姿であった。

「由子ちゃん……か」

黒吉は、露骨にがっかりして、起しかけていた半身を倒した。

「黒ちゃん、どお――」

「うん……」

「でも、こんなに早くよくなって、よかったわねエ……」

「うん」

「……まだ気分が悪いの――」

「ううん、もうすっかりいいんだ」

「そう、よかったわね」

「葉子ちゃんは――」

「葉子ちゃん?」

由子は、一寸いやあな顔をしたようだったが、すぐさり気なく

「葉ちゃんはね、解散するとすぐ義公と東京の叔父さんを頼って行くって行ったわ」

「義公と――」

黒吉は、カッと胸のほてるのを感じた。

葉子と、あのキザな、生っ白い義公とがまるで新婚気取りで汽車にゆられて行ったのか、と思うと、眼の眩むような不快に、ドキドキと鼓動が昂まって来た。

「葉ちゃんも悪いわねエ、一度位、黒ちゃんを見舞って行ってもいいのに……」

由子は、わざと思わせぶりに、そういって黒吉の顔を覗き込んだ。

(ちえッ、何いってやがんだい……)