Japanische Klassiker mit Furigana
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おぎふくうた
犀星王朝小品集
室生 犀星
Lesen Sie 犀星王朝小品集 (おぎふくうた) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 105.794 Zeichen · 211 Bildschirme
「よく致されて我ら面目を施した。」
匂やかな新妻はやっと笑って見せただけであった。
「人形はよい人形ではなかったか。」
「母のかたみにございます。」
十七で母にわかれた筒井は、その年から三年経ったあと、父に死別していた。
「そんな貴い人形を惜しいことを致された。」
「いいえ、牛が哀れにございます。それにあの子供もみめ美しゅう覚えましたから惜しいことはありませぬ。」
渡舟が土手に着くと筒井は津の国の土をはじめて踏み、柔らかい春早い草々の頭にはもはや先の美しい緑がもえていることを知った。そして、それは何と夥しい蘆の繁りであったろう、それらの蘆にはもう青い液状の緑がのぼりかけていた。
例の牛は土手にあがると、のそりのそりと曳子と一緒に歩いて行った。白の斑点はまるで雲のように鮮やかだった。
「津の国はよいところでございますね、水が多いので景色が美しくおぼえます。」
かくて彼らは五年の月日をこの津の国に送り、男は下の役を解かれてからきょうですでに三年経っていた。
その渡舟でおなじ時刻に別れるのも、なにか宿縁のようなものがあった。彼らはもう売る物も、人に頒けるものもないほど、すべてが衣食についやされたあとだったので、家を立ち退くには雑作はなかった。