Japanische Klassiker mit Furigana
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おぎふくうた
犀星王朝小品集
室生 犀星
Lesen Sie 犀星王朝小品集 (おぎふくうた) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 105.794 Zeichen · 211 Bildschirme
隣近所に男は頼みに行って見たもののおよそ小豆と名のつくものは、依然、一粒もなかった。ただの小豆ではあったが幸先を祝うものゆえ、夫の失望は大きかった。小豆の飯の好きな夫に、そのわかれの飯に小豆を混えないことが筒井にも悲しかった。
「どこの家にも一粒もない。」
夫はそういい、せめて鉈豆のようなものもないかと尋ねてみたが、これもやはり一粒もなかった。それほど恐ろしい暴風のような蝗の大軍の襲うたこの地方では、青いものも後蒔きの分だけがそだっただけだった。
筒井はどこやらに小豆が戸棚か、どこかにしまわれてあるような気がして袋戸棚や茶棚をさがして見たが、どこにも紅をした小豆は見当らなかった。
「もういいではないか。」
「いいえ、たしかにどこかに、小豆があるように覚えがございます。ちょっと、わたくしに考えさせて下さいませ。」
どこかにしまってあった。筒井は心覚えのあるところを捜して見たが、どこにも見付けられなかった。だが、この遠いような近くにあるような考えはどうしても諦めかねるほどの、心にのこっている小豆であった。
「ええと、どこかにあった。」
彼女はその時、やっと考えあてて、膝を叩いて小さいよろこびの声をあげた。