Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Lesen Sie 玉藻の前 (たまものまえ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.703 Zeichen · 261 Bildschirme
「はじめてお目見得つかまつりまする」
老僧は会釈もしなかった。彼はしずかに数珠を爪繰っていた。
「委細は左少弁殿からお願い申し上げた通りで、あまりに罪業の深い女子の身、未来がおそろしゅうてなりませぬ。自他平等のみ仏の教えにいつわりなくば、何とぞお救いくださりませ」と、玉藻は哀れみを乞うように訴えた。
彼女は物詣でのためにきょうは殊更に清らかに粧っていた。紅や白粉もわざと淡くしていた。しかもそれが却って彼女の艶色を増して、玉のような面はいよいよその光りを添えて見られた。堪えられぬ人間の悲しみを優しいまなじりにあつめたように、彼女はその眼をうるませて阿闍梨の顔色を忍びやかに窺ったときに、老僧の魂の緒も思わずゆらいだ。彼は生ける天女のようなこの女人を、無下に叱って追い返すに忍びなくなった。
「お身、それほどにも教化を受けたいと望まるるのか」と、阿闍梨は声をやわらげて言った。
玉藻は無言で手をあわせた。彼女の白い手首にも水晶の数珠が光っていた。
「して、これまでに経文など読誦せられたこともござるかな」と、阿闍梨はまた訊いた。
もとより何のわきまえのない身ではあるが、これまで経文の片端ぐらいは覗いたこともあると、玉藻は臆せずに答えた。