Japanische Klassiker mit Furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Lesen Sie 玉藻の前 (たまものまえ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.703 Zeichen · 261 Bildschirme
「ほう、いこう濡れて来た。笠を持たずにまいったな」と、泰親は自分の前に頭をさげた若い弟子の烏帽子をみおろしながらほほえんだ。
「おことばにそむいて笠を用意せずに出ました」と、千枝太郎は恐れ入ったように再び頭をさげた。
「いや、懲るるのも修業の一つじゃよ」
事もなげに又笑った泰親の優しげな眼の色は見るみる陰った。彼は扇を膝に突き立てて、弟子の顔を睨むように見つめた。
「お身は途中で誰に行き逢うた」
千枝太郎はぎょっとした。しかも何事にも見透しの眼を持っている、神のような師匠の前で、彼はいつわりを言うべきすべを知らなかった。彼は河原で玉藻の藻に偶然出逢ったことを正直に白状すると、泰親は低い溜息をついた。
「わしもそう見た。お身は再び怪異に憑かれたぞ。心せい」
言い知れない恐怖におそわれて、千枝太郎は息をつめて身を固くしていると、泰親はあわれむように、また諭すように言い聞かせた。
「お身はあやかしに一度憑かれて、危うく命を亡おうとしたことを今も忘れはせまい。その後は一心に修業を積んで、年こそ若けれ、ゆくゆくは泰親の一の弟子とも頼もしゅう思うていたに、きょうは俄にお身の相好が変わって見ゆる。