Japanische Klassiker mit Furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Lesen Sie 玉藻の前 (たまものまえ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.703 Zeichen · 261 Bildschirme
「わッ、人殺しじゃ」
その声の消えないうちに、二度目の太刀さきは兼輔の頸のあたりを横に払ったので、彼は息もせずにそこにぐたりと倒れた。実雅は片足でそれを二、三度揺り動かしてみたが、兼輔は石のように転ばったままで、再び身動きをしそうもなかった。
「はは、もろい奴じゃ。おのれその醜態で、実雅の悪口いうたか」
彼は勝利の満足をおぼえると同時に、一種の不安と後悔とが急に湧き出して来た。死人に口なしでなんとでも言い訳は出来るようなものの、かりにも左少弁たる人を河原で暗撃ちにしたとあっては、後日の詮議が面倒である。憎い奴ではあるが、さすがに殺すまでにも及ばなかったとも悔まれた。今夜の河原は闇である。この闇にまぎれて逸早くここを立ち退いてしまえば、相手は殺され損で、誰にも詮議はかかるまいと思うと、実雅は俄にあとさきが見られて、あわてて血刀を兼輔の袖でぬぐってそっと鞘に収めようとすると、うしろからその肩を軽く叩く者があった。ぎょっとして振り返ると、自分のそばには玉藻が立っていた。凄いほどに白い彼女の笑顔は、暗い中にもありありと浮き出して見えた。
「見事になされました」