Japanische Klassiker mit Furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Lesen Sie 玉藻の前 (たまものまえ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.703 Zeichen · 261 Bildschirme
女の童はもうおびえて、声も出なかった。ただ身を固くしてそこにうずくまっていると、玉藻はするすると寄って来て、彼女の細い腕をつかんだ。
「おまえ見たか」
女の童はやはり黙ってすくんでいた。
「隠さずに言や。なにを見た」
「なんにも……見ませぬ」
彼女はふるえながら答えたが、もう遅かった。女の童の小さいからだは、蛇に呑まれようとする蛙のように手足をひろげたまま固くなってしまった。その正体のない女の童を地の上にまろばして、玉藻はまずその黒い髪の匂いを嗅いだ。豊かな頬の肉をねぶった。
このとき、鬼火のような小さい松明の光りが植え込みのあいだからひらめいて、だんだんにこちらへ近寄って来た。それは織部清治で、彼は宵と夜なかと夜あけとの三度に、屋形の庭じゅうを見廻るのが役目であった。
彼は暗いなかで、犬が水を飲むような異様なひびきを聞いたので、ぬき足をしてここへ忍んで来た。そうして、その正体を見定めようとして松明をあげると、その火は水を掛けられたように消えてしまった。しかしその一刹那に、そこに這いかがまっている人が玉藻であるらしいことを、彼は早くも認めた。
「玉藻の御か」