Japanische Klassiker mit Furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Lesen Sie 玉藻の前 (たまものまえ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.703 Zeichen · 261 Bildschirme
失礼は御免、早々にお帰りあれ」
「それは残り多いこと」と、玉藻は相手の無礼を咎めもせずにあでやかに笑った。「お客は播磨守殿とやら。大切の御用談でござろうか」
「主人と閑室にての差し向かい、いかようの用談やら我々すこしも存じ申さぬ」と、成景はにべなく言った。
それでも玉藻は素直に立ち去らなかった。自分は是非とも入道殿にひと目逢って密々に申し入れたい大切の用事があるから、お客の邪魔にならないように別間でしばらくお逢いを願いたいと押し返して言った。成景はなんとかして主人に逢わせまいと考えているらしく、いろいろに詞をかまえて追い払おうとしたが、玉藻はなかなか動きそうもないので、彼もとうとう根負けがして又もや奥へ引っ返したかと思うと、今度はすぐに出て来て、玉藻を内へ案内した。
千枝太郎はもとの一人になって、えんじゅの青い影の下に立っていた。彼はもう半分は夢のようで、なにを考える力もなかった。青い葉をゆする南風がそよそよと彼の袂を吹きなびかせて、鈴を振るような蝉の声がにぶい耳にもこころよく聞こえた。
しばらくして玉藻は成景に送られて出て来た。彼女の口元には豊かな笑みが浮かんでいた。