Japanische Klassiker mit Furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Lesen Sie 玉藻の前 (たまものまえ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.703 Zeichen · 261 Bildschirme
岸の両側の大路小路も見物の群れで埋められていた。これらの幾千の人びとはいずれも額に汗をにじませながら、白く灼けている空を不安らしく眺めていたが、空は面憎いほど鎮まり返って、鳥一羽の飛ぶ影すらも見えなかった。
「やがてふたにもなろうに、雲一つ動きそうにも見えぬではないか」
「祈祷は午の刻までじゃという。それまで待たいでは奇特の有無はわかるまいぞ」
こんなささやきが見物の口々から洩れた。あまたの殿上人の汗ばんだ眉のあいだに、不安の皺がだんだんに深くなってきた。しかし頼長は騒がなかった。泰親がきょうの祈祷の趣意は雨乞いではない。玉藻の前に対する悪魔調伏の祈祷である。頼長や信西の側からいえば、雨の降ると降らぬとは問題でない。泰親はもともと雨を祈っているのでないことを承知している彼らは、雨の降らないのをむしろ当然に思っているくらいであった。
泰親も四人の弟子もきょうの空と同じように鎮まり返って祈りつづけていた。彼らはまじろぎもしなかった。風のない壇の上に五色の幣はそよりとも動かなかった。河原一面の日に照らされながら、公家も侍も息をつめて控えていた。
やがて午の刻が来た。