Japanische Klassiker mit Furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Lesen Sie 玉藻の前 (たまものまえ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.703 Zeichen · 261 Bildschirme
して、関白殿よりは今になんの沙汰もないか」
「なんの御沙汰もござりませぬ」
「それは重畳。関白殿も本来は賢い御仁じゃで、無道の御沙汰もあるまいと存ずるが、なにをいうても今は悪魔に魅られているので、いかようの御沙汰もあろうかと、それがしも内ない懸念しておったが、今になんの御沙汰もなくば、存外穏便に済もうも知れぬ。いずれにしても信西が引き受けた。播磨守にも安心せいと伝えてくりゃれ」
関白殿からなんの御沙汰もないのは、かの玉藻の取りなしであることを知っていたが、千枝太郎は、この人の前でもそれを明白に言うのを憚った。彼はうやうやしく礼をいって、信西の屋敷を出ると、月はいよいよ明るくなって、路ばたになびく柳の葉も一いちかぞえられる程であった。
姉小路を出て、高倉の辻へさしかかると、ゆき先きで犬のほえる声がきこえた。気にも留めずに歩いてゆくと、犬の声はそこにもここにも聞こえた。それは唯ならぬ唸り声であった。
「盗賊かな」と、千枝太郎はあるきながら考えた。
しかし彼は逞しい若者である。賊の一人くらいは取りひしいで呉れようという息込みで、わざと大股に辻のまん中へ進んでゆくと、犬の声はだんだんに近くなった。