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Japanische Klassiker mit Furigana

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たまものまえ

玉藻の前

岡本 綺堂

Lesen Sie 玉藻の前 (たまものまえ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.703 Zeichen · 261 Bildschirme

Aozora Bunko

彼女の眼は怪しくさか吊って火のように燃えていた。彼女の口は獣のように尖っていた。千枝太郎は再び眼を据えてよく視ると、それは一時のまぼろしで、月に照らされた女の顔はやはり美しい玉藻に相違なかった。

「犬に取り巻かるるは怖ろしいものじゃ。男でも難儀することがある。別に怪我もなかったか」と、彼は摺り寄って又きいた。

玉藻はやはり黙っていた。異常の恐怖に囚われて、彼女はまだ息も出ないらしかった。千枝太郎は加勢の人に頼んで、家から水を持って来てもらった。その水をのんで、玉藻はようよう我に返ったらしく見えたが、それでもただ黙礼するばかりで、ひと言も口へは出なかった。人びとに挨拶して別れて、千枝太郎は玉藻を送って行った。

「お前にはいろいろ恩になりました」と、玉藻は途中で初めて言い出した。「先度も物に狂うた法師にとらわれて、ほとほと難儀しているところを、お前に救うてもろうたに、今夜もまた……。とりわけて今夜の怖ろしさ、わたしは生きている心地もなかった」

「関白殿のお屋形には犬を飼うておられぬか」

「わたしは犬が大嫌いじゃで、殿に願うて一匹も残さず追い払うてしもうた」

「犬もおとなしければ可愛いものじゃが、群がって来て人を噛もうとする、そのような野良犬は憎いものじゃよ」