Japanische Klassiker mit Furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Lesen Sie 玉藻の前 (たまものまえ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.703 Zeichen · 261 Bildschirme
「やっぱり野良狐めのいたずらじゃ」と、翁はうなずいた。「しかしまあ無事でめでたい。父御もさぞ案じていらりょう。さあ、早う戻らっしゃれ」
夜はもう更けていた。三人は自分の影を踏みながら黙ってあるいた。陶器師の翁は自分の家の前で二人に別れた。千枝松は隣りの門口まで藻を送って行って又ささやいた。
「これに懲りてこの後は一人で夜歩きをせまいぞ。あすの晩もわしが誘いにゆくまで、きっと待っていやれ。よいか」
念を押して別れようとして、千枝松は女が左の手に抱えている或る物をふと見付けた。それは彼女が枕にしていた古い髑髏で、月の前に蒼白く光っていた。千枝松はぎょっとして叱るように言った。
「なんじゃ、そんなものを……。気味が悪いとは思わぬか。抛ってしまえ。捨ててしまえ」
藻は返事もしないで、その髑髏を大事そうに抱えたままで、ついと内へはいってしまった。千枝松は呆れてそのうしろ影を見送っていた。そうして、狐がまだ彼女を離れないのではないかとも疑った。
その晩に、千枝松は不思議な夢をみた。
第一の夢の世界は鉄もとろけるような熱い国であった。そこには人の衣を染めるような濃緑の草や木が高く生い茂っていて、限りもないほどに広い花園には、人間の血よりも紅い芥子の花や、鬼の顔よりも大きい百合の花が、うずたかく重なり合って一面に咲きみだれ