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Japanische Klassiker mit Furigana

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たまものまえ

玉藻の前

岡本 綺堂

Lesen Sie 玉藻の前 (たまものまえ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.703 Zeichen · 261 Bildschirme

Aozora Bunko

彼女は恥ずかしそうに少しく顔を染めた。青侍は我に返ったようにうなずいた。

「おお、そうじゃ。関白殿下の御沙汰によって、当屋形の大納言殿には独り寝の別れという歌を広く世間から召し募らるる。そなたもその歌を奉ろうとか。奇特のことじゃ。しばらく待て」

もう一度美しい乙女の顔をのぞいて、彼は奥へはいった。柳の葉が乙女の上に又はらはらと降りかかって来た。しばらく待たせて青侍は再び出て来て優しく言った。

「殿が逢おうと仰しゃる。子細ない、すぐに通れ」

案内されて、藻は奥の書院めいたひと間へ通された。どこからか柔かい香の匂いが流れて来て、在所育ちの藻はおのずと行儀を正さなければならなかった。あるじの大納言師道卿は彼女と親しく向かい合って坐った。敷島の道には上下の隔てもないという優しい公家気質から、大納言はこの賤の女にむかっても物柔らかに会釈した。

「聞けば独り寝の別れの歌を披露しようとて参ったとか。堂上でも地下でも身分は論ぜぬ。ただ良い歌を奉ればよいのじゃ。名は藻とか聞いたが、父母はいずこの何という者じゃな」

「父は……」と、言いかけて藻はすこしためらった。

しばらく待っていても次の句が容易に出て来ないので、師道は催促するように訊いた。