Japanische Klassiker mit Furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Lesen Sie 玉藻の前 (たまものまえ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.703 Zeichen · 261 Bildschirme
「御前、よろしゅうお取りなしをお願い申す」と、行綱は縁端までいざり出て言った。
「心得申した。いざ参られい」
藻のあとさきを囲んで、清治と下人らが門を出ようとするところへ、千枝松が来た。彼はまだ病みあがりの蒼い顔をして、枯枝を杖にして草履をひきずりながら辿って来た。彼は藻をひと目見てあっと驚いたが、そばには立派な侍が物々しい顔をして警固しているので、彼はむやみに声をかけることも出来なかった。となりの陶器師の店の前に突っ立って、彼は見違えるように美しくなった藻の姿を呆れたように眺めていると、陶器師の翁も婆も眼を丸くしてすだれのあいだから窺っていた。
藻はそれらに眼もくれないように、形を正して真っ直ぐにあるいて行った。千枝松はもう堪まらなくなって声をかけた。
「藻よ。どこへ行く」
彼女は振り向きもしなかった。一種の不安と不満とが胸にみなぎってきて、千枝松は前後のかんがえもなしに女のそばへ駈け寄った。
「これ、藻。どこへゆく」と、彼はまた訊いた。
「ええ、邪魔するな。退け、のけ」
清治は扇で払いのけた。勿論、強く打つほどの気でもなかったのであろうが、手のはずみでその扇が千枝松の頬にはたとあたった。