Japanische Klassiker mit Furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Lesen Sie 玉藻の前 (たまものまえ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.703 Zeichen · 261 Bildschirme
「医師はなんと言わしゃれた」
「貧に暮らす者の悲しさは、医師もこの頃は碌ろくに見舞うて下さらぬ」と、藻は袖を眼にあてた。「まだそればかりでない。父さまが長のわずらいで、家じゅうのあるほどの物はもうみんな売り尽くしてしもうた。秋はもう末になる。北山しぐれがやがて降り出すようになったら、わたしら親子は凍えて死ぬか。飢えて死ぬか。それを思うと、ほんに悲しい。きのうも隣りの陶器師の婆どのが見えられて、いっそ江口とやらの遊女に身を沈めてはどうじゃ。煩うている父御ひとりを心安う過ごさせることも出来ようぞと、親切にいうて下されたが……」
「陶器師の婆めがそのようなことを教えたか」と、千枝松は驚きと憤りとに、声をふるわせた。「して、お前はなんと言うた」
「なんとも言いはせぬ。ただ黙って聴いていたばかりじゃ」
「重ねてそのようなことを言うたら、すぐわしに知らしてくれ、あの婆めが店さきへ石塊なと打ち込んで、新しい壺の三つ四つも微塵に打ち砕いてくるるわ」
罵る権幕があまりに激しいので、藻はなにやら心もとなくなった。彼女はなだめるように男に言った。
「わたしらの難儀を見かねて、あの婆どのは親切に言うてくれたのじゃ」