Japanische Klassiker mit Furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Lesen Sie 玉藻の前 (たまものまえ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.703 Zeichen · 261 Bildschirme
そのほかに絵もすこしばかり描いた。笛もよく吹いた。当代の殿上人のうちでも風流男の誉れをうたわれて、なんの局、なんの女房としばしばあだし名を立てられるのを、ひとにも羨まれ、彼自身も誇らしく考えていた。
その風流男の前に立って恥じらう風情もなしに心易げに物をいう女子は、人間の色も恋もとうに忘れ果てた古女房か、但しは色も風情も彼に劣らぬという自信をもった風流乙女か、二つのうちの一つでなければならなかった。彼と向き合っている女子は確かに後の方の資格を完全にそなえていた。
「なんの御会釈に及びましょう。おんもてなしはわたくしどもの役目、何事も不行届きで申し訳がござりませぬ。この頃の春の日の暮るるにはまだ間もござりましょう。あちらの亭へお越しなされて、今すこし杯をお過ごしなされてはいかが。わたくし御案内を仕まつります」
「いや、折角ながら杯はもう御免くだされ。先刻からいこう酔いくずれて、みだりがましい姿を人びとに見せまいと、この木蔭まで逃げてまいったほどじゃ」と、兼輔は扇を額にかざしながらほほえんだ。
「と申さるるは嘘で、誰やらとここで出逢う約束と見えました。そういうことなら、わたくし何時までもここにいて、お前がたの邪魔しますぞ」