Japanische Klassiker mit Furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Lesen Sie 玉藻の前 (たまものまえ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.703 Zeichen · 261 Bildschirme
あの鋭い眼でじっと睨まれると、なにやら薄気味悪うなって身がすくむようじゃ。ははははは」
また一人の男が高く笑い出すと、兼輔はだるそうな眼をして半分起き直った。
「ほんにそうじゃ。さっきも……」
と言いかけて彼はまた俄に口をつぐんだ。妬みぶかい男や女が大勢列んでいるところで、うかつに先刻の秘密は明かされないと思った。まだ寄るべも定まらない池の玉藻を、あっぱれ自分の手にかき寄せたという強い誇りが彼の胸に満ちていながらも、さすがにまだそれを発表する時機ではないと、彼は無理に奥歯で噛み殺していた。
「さっきもどうなされた。お身さまも何か叱られたか、睨まれたか」と、彼に膝枕をかしていた女が、薄い麻紙で口紅をぬぐいながら訊いた。
「いや、別に何事もなかったが、庭先きでふとすれ違うたので、早々に逃げて来た」と、兼輔は笑いにまぎらせた。
そう言いながらも気にかかるので、彼は伸び上がって座敷の隅々を見渡したが、玉藻らしい女の影はやはりどこにも見えなかった。彼はまた一種の不安を感じはじめた。何者かが彼女を小蔭へ誘い出して、自分と同じように恋歌の返しを迫っているのではないかとも疑われた。