Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ばんちょうさらやしき

番町皿屋敷

岡本 綺堂

Lesen Sie 番町皿屋敷 (ばんちょうさらやしき) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.494 Zeichen · 67 Bildschirme

Aozora Bunko

「泣きは致しませぬ」と、お菊は微かに答えた。

「では、顔を向けて見せい。はは、見せられまい」と、播磨はなぶるように又いった。「正直にいわぬと暇をくれるぞ」

ぎょっとしてお菊は顔を上げた。暇をくれる――それが今の彼女には冗談として聞き流すことが出来なかった。抑え切れない怨みと妬みとがつむじのように彼女の胸にうずまいて起った。その唯ならない眼の色を播磨は怪しむように見つめたが、やがて又堪らないように笑い出した。

「はは、暇をくれる……それは戯れじゃ。腹を立てるな。それともほかに仔細があるか。仔細をいわねばこそ、こちらからもついなぶるようにもなる。腹を立つるほどなら仔細をいえ」

お菊は自分がどんな端下ない風情を男に見せたかと思うと、恥かしいのを通り越して急に悲しくなった。彼女は振袖に顔をうずめて縁に泣き伏した。

「はて、泣虫め。そのような弱虫が白柄組の侍の女房になれるか」

ここぞと思って、お菊は泣きながら訊き返した。

「侍の女房……この菊が侍の女房になれましょうか」

「いうまでもない。青山播磨も侍の端くれではないか。その妻ならば……」

「でも、小石川の伯母様が……」