Japanische Klassiker mit Furigana
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ばんちょうさらやしき
番町皿屋敷
岡本 綺堂
Lesen Sie 番町皿屋敷 (ばんちょうさらやしき) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.494 Zeichen · 67 Bildschirme
しかし又、一方から考えると、母に小判二枚を下さるというのは、殿様が自分を愛している証拠とも見られる。それほどの殿様が自分をむごたらしく突き放す筈はない。彼女は涙の乾いた笑顔を遠い水鏡にうつして見た。
泣いていいか、笑っていいか、今のお菊には見当が付かなくなった。それでも彼女の眼からは涙の雫が訳もなしに流れて落ちた。彼女は柳の青い枝に縋りながら、井筒の上で心ゆくばかり泣いていたかった。
「菊。何を致しておる。頭の物でも落したか」
不意に声をかけられて見返ると、主人の播磨は笑いながら縁先に突っ立っていた。
「お帰りでございましたか。一向に存じませんで……」と、お菊は袂で眼を拭きながら慌てて会釈した。
播磨は無言で招いた。招かれてお菊は縁先に戻ったが、その泣顔を覗かれるのを恐れるように彼女は白い襟もとを見せて、足もとに散る花を伏目に眺めていた。
「菊。泣いていたな。何を泣く。朋輩と喧嘩でも致したか。十太夫に叱られたか」
お菊は恥らうように黙っていた。
「隠すな。仔細をいえ。但しは井筒へ身でも投ぐる積りか」と、播磨は又笑った。
どこで飲んで来たのか、若い侍の艶やかな白い頬はほんのりと染められていた。