Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
が、彼女は耐えた。すこし座に耐えていると、常に返る。
ひとは草心尼を見るに、冷ややかな花の孤独と、憐れみを感ずるらしいが、彼女はじぶんを孤独と思ったことはない。
それも、親鸞がいったような“――仏と二人づれ”でもなかった。仏をも加えれば、彼女はいつも三人づれといってよい。その一人は彼女が腹をいためて生んだ覚一だった。だから彼女の姿には見えるその孤独も、じつは人知れず、心は賑やかな三人暮らしの月日だった。――しかし今日ばかりは、その賑わいも心に持てず、ほんとの独りぼッちの身を、終日、硯に水もない小机に支えられていた。
一方。――館の方でも、その日は暮れるまで、何か物々しげな人出入りだった。
近郷の新田一族が、次々に館の外や中門に駒をつなぎ、また足利表からは、昨夜の死者のかばねや怪我人などもやがて運び込まれて来たらしい。
さらに、たそがれ迫る頃の評議では、何か激昂していう者の声が、草心尼のいる小机まで聞えて来た。
「おお、あの声は、死者の縁類か。無残な亡骸を見ては、その怒りは無理もない」
彼女は死者のために、口のうちの経をくり返していた。そのうちに、誰が運んできたのか、彼女の墨染の袖のわきに、ポチと夜の灯がともっている。