Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
しかし、場合が場合である。
菊王も頼春も、そんな意外な変化が、自分たちの死地の一角に、はや起っていたなどとは、もちろん思いも及ばず、眼はすでに左右から迫った山伏姿の諜者群にむかって、まったく血ばしッていたのだった。
「これまでだ、頼春どの」
菊王がいえば、
「おう、死のうっ、菊王」
頼春も叫んでいる。
六波羅へ曳かれても死だし、ここで斬り死にしても死だと思う。
この捨て身へ、諜者方は、衆をたのんだ形がなくもない。いや放免頭の大蔵から、あらかじめ「手捕りにしろ」と命じられていた寸法もあったろう。大勢、挙ッて山伏杖を振りかざし、押ッとり囲みにかかッたのである。が、棒の雨で撲られるぐらいですぐ伸びてしまう両者の死に物狂いでもなかった。
いや、予想の狂いは、それだけに止まらない。
諜者たちの二、三がとつぜん異様なぶッ仆れ方をし出したのである。不意に自己を失ったような引ッくり転り方をした白衣の体には、どこから飛んで来るのやら、得態の知れぬ矢が突き刺さッていた。初めはすべて夢中だったが、バラッと足もとに搦み落ちた空矢の響きに、
「わっ、矢が来るっ」
「ほかにもいるぞッ」