Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
何がいるとも分らぬだけに、彼らの狼狽は、はなはだしかった。われがちに、逃げまどった。おそらく、頼春、菊王の二人は、これを自身の威力とのみ信じて、相手を追ッかけ廻したことにちがいあるまい。――菊王のごときは、逃げる者をのがさじと追って、つい遥かまで行ってしまった。
「……ああ」
逃げ散る白い影を夕霞の果てに見失うに至って、菊王もとたんにガクと気がゆるんだ。火みたいな息と一しょに、草むらに腰をついた。そして、体の傷みなどはまだ意識の中には覚えもせず、そのまま地底へ落ち入るように気が遠くなりかけた。
「おおいっ。……菊王っ」
すると彼方で、自分を呼ぶ声がした。はッとわれに回り、彼も、おおいッと、体じゅうで呶鳴った。そして転がるようにもとの方へ駈け出した。
「……あっ、誰だろ?」
急に菊王は立ちすくんだ。
近づいていいか悪いか、一瞬彼には判断もつかない人影を頼春の前に見たからだった。
それは狩衣姿の年若い武士たちであった。うち二人まで、手に弓を抱えている。
その三名の前から、振向いていた頼春は、彼のためらいを見て、手を高くさしまねいた。
「やあ菊王、何しておるのだ。