Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
――ここの篠村八幡は、彼が弱冠のときの曾遊の地。また、彼が反北条の旗上げをした地。――思い出多い三度めの宿命地だった。
九死に一生をえてたどりついた篠村八幡の森は、尊氏に再生の思いだけでない何かをさらに誓わせていたにちがいない。
ここには、かつて自分が旗上げの日に籠めた願文がおさめられてある。――一には世のために、二には朝家のため、三にはわが源家再興のため――と素志を天にちかった願文だった。そしてついにそのどれもまだ達していないのみか、かえってこんな蹉跌からみじめな惨敗をみてしまった。
「直義」
「は」
「いたか」
「途中、何度かお姿を見失いかけましたが」
「つかれたなあ、さすが」
「茫として、つかれた感じすら今はわかりませぬ」
「そんなことではならぬ。まずおちつけ。ここの御堂は尊氏にとって、何かといえば峠の茶屋のような憩いの場となっている」
拝殿へむかって礼拝はしていたが、ことばどおり彼はここを峠の一床几としているのだろう。階の一端に腰をおろして、さて? とここまでの帰結やこれからの方向にしばらく思案顔だった。そして旗上げ当初は何もかもが順調であったが、さいごへ来ては事すべて、自分の布置や考えとくいちがってむりな戦をあえてしてきた手際のまずさに思いいたらずにいられなかった。