Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
直義は鑁阿寺の置文を今とて夢にも忘れてはおりません。兄者には、いつかあれを、お忘れではないのですか」
と、ことばを直した。自分の激血と兄の反射とをなだめ合うつもりで強いて低く静かに言ったのだった。
「おたがい、いつか年をとりました。都の風にも吹かれ、一門三十二党それぞれに家運を伸ばし、わけて兄者は、正三位左兵衛ノ督に叙され、八座の宰相(参議)の御一人にも挙げられ、殿上人の列にも列せられてみると、置文のお誓いなど、自然お心からうすらいでしまうのは、人情自然かともぞんじますが、しかしそれでは一体なんのために」
「直義、直義……」
「いやもすこしいわせてください。そんな小さい望みのために。そ、そんな小成に安んじるくらいなら何も」
「過ぎるぞ、口が」
「いいや、先祖家時公の置文などを御一門に誓わせたり、またこれまで、あらゆる恥に耐え、多くの者を奮い死なせ、その秘事のため、私はいまにいたるも妻を持たず、兄者は妻子はあるも妻子と一つに居ることもないなどの苦労は何もすることはなかったはずです」
「だまらんかっ、ばか」
ついに、苦しいものは、彼よりは尊氏を耐え難くして来た。