Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
金剛山寺では正成の不意なおとずれに、院主役僧らまで、何事かと驚いたらしく、
「まえもって、御登山をうかがっておりましたらお出迎えにも立ちましたものを」
と、客殿にこの風来な領主を拝して、ひたすら詫びた。
正成はかえって気の毒そうに。
「いや何の。今日は日和もよし、所願の写経も終ったので、ふと思い立って来たまでのこと。かたい儀礼はやめてほしい」
「御写経を」
「む。本尊法起菩薩の宝前に納めおきとうて」
「それは御奇特な」
「かたがた、こよいは参籠のつもりでまいった。なにかと供華の用意などもしてもらいたい」
「かしこまりました」
日は暮れて、沐浴、夕餉などのあと、正成は浄衣になって、転法輪院の本堂に入った。途中で拾って蔦王に持たせてきた白骨は僧の手によって燈明や香煙のうちに安置され、やがて、僧たちの供養が春の夜をかけて長々といとなまれた。
夜半になると、正成はひとりで籠堂へ移って夜をあかした。ほとけと共に明かした朝はそう眠りもしていなかったのに体もあたまも清々としていた。これが自分だったと思われるような生き身の味を久々に味わった。
「そうだ、ここにいて」
下山が惜しまれて、彼はその日も翌日もつい山上にいてしまった。