Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
「もしや、河内守さまではございませぬか。いや、先頃お登りのせつ、よそながらお姿を拝してもおりました。おそれながら、しばしの間、御見をたまわりたく、また親しく申し述べたい儀もございまする。何とぞおききとどけ願わしゅう存じまする」
「ほ。……?」
正成は、じっと見て。
「そちは何者か」
「まず、それを申すが順ではございますが、お後ろには、侍童もおられまする。ちと、ここでは」
「はて。侍童の耳をすら憚る者か」
「さればとて、決して、悪意を持つ者ではございませぬ。かくのとおり……」と、男は帯前を叩き、さらに諸手を開いてみせながら「身に寸鉄も帯びてはいません。いやいや、とばかりではまだ信じてはいただけますまい。これを御一見くださいましょう」
と、頭巾を脱ぎ、頭巾の裏の縫目から、細かに折った一札をまさぐり出して正成へ示したのだった。
「…………」
正成は披いて、黙然と見終った。それは四国、山陽などの足利方の水軍の間に用いられているらしい水路の関所札――つまり船鑑札であり、黒肉の割印に加えて、足利直義の花押もまたあざらかといってよかった。
「さようであったか」
正成はかろくうなずいて、すぐそれを相手の者の手に返した。