Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
「おことばですが」
と、彼はしずかに、やがて一矢を相手にむくいた。
「なぜ足利殿と結ぶことが、楠木殿には、武門の名折れになりましょうか。――元をただせば、楠木家とて、北条幕府の下の、一被官だったもの。――足利家もまたしかりです。――が、世の乱脈に会い、幕府の命脈もつき、必然な世直しの到来から、御当家も武家の使命、一方に拠って立ったものでございましょうに」
「御辺もいうのか。近ごろの流行り言葉を」
と、正成は一笑の下に。
「だから、変節も裏切りも世の慣い。何をはばかることがあろう、と申すわけよな」
「それとはいささか違いまする。いや、大いに違う」
「どう違う」
「私欲の反逆や無節操と、世をよくしようと念じての苦節とは」
「まことに」
と、正成は素直にうなずいてみせた。しかし一歩も譲ッているのではなかった。
「尊氏どのの本心も、それではあろう。……けれど世を思うことにおいてなら、みかどは申すにおよばず、おおかたは、世が悪しかれとは祈っていまい。まして至上の御位にあるみかどに私利私欲のないことは誰よりもあきらかなこと」
「が、それを繞る公卿、武家輩。これは一概に申せませぬ」