Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
兄者とはいわなかった。「ついまたあまえて、言いたい放題を吐きすぎました。ご折檻は身にこたえる。お気のすむまで打ってください」
救われたように尊氏もすぐ顔を解した。
「いやおれも大人気ないわ。そちと二人だけでいると、とかくわがまま同士になりやすい。そのくせ兄のおれの中には亡父のおもかげや先祖の遺言などが常住無意識に住んでいる。それを直義にまで水臭くされるとこれまた淋しい。そこらが尊氏の矛盾だろうよ。だがどう争ッたところで、しょせん二人は兄弟なのだ。かんべんしろ、弟」
こういわれると直義は口ほどもなかった。ほろッと涙をこぼした。
尊氏はそのとき、その眸をじろっと斜め後ろへやった。近侍の細川頼春だろう。主君同士ふたりの争いを心配して、廊のそとにかがまっていたらしいが、すうと退がって行った気配である。尊氏はすぐ言った。
「な、直義。とかく口論してみても始まらぬ。大塔ノ宮弑逆の一事も、勅答の一条も、はや、やってしまった後のまつりだ。いまさらどうなるものではない。またそちの悪意でもなく、みなこの尊氏を思ってしてくれたことではある。このうえはあとの思案だ。が、その思案には」