Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
どのようなお人へも、ぼんやりとただお顔を見てはいられないのでございまする。長年、仮面打ち一ト筋に生きてまいりましたせいか、人さまさえ見れば、すぐそのお顔を生き手本と見て、不遠慮な眼ざしを凝らしてしまうことが、つい毎々でござりまして」
「なるほど」
「媼を見れば、媼の目皺。荒くれを見れば荒くれの眉。かなしみ、よろこび、哀楽の色。女性も餓鬼も貴人も乞食も、仮面打ちの目にはみなありがたい生き手本でござりますれば」
こう聞いて、正成はまたひとつの感銘をかさねた。なろうことならこの老翁と小屋の木屑でも焚いて一ト晩かたりあってみたいほどな興味をもった。けれどままならぬ身であったのはもちろんだし、ちょうどそのときも、彼の帰りの遅いのを案じてのことだろうか。――水分の方から馬で安間了現と桐山小六の二人がここへ向って飛んで来る姿が、道のはるかに見えていた。
外の葉桜に駒をつないで、さっきから、おあるじが立つのを待っていた郎従たちは、
「殿。殿。……何やら急なお迎えの者がこれへ見えるようでございます」
と、はやそのことを、小屋の内の耳に入れ、正成もまたそのしおに、すぐ外へ出て来て、近づく家人の姿を待っていた。