Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
「それはよいとも――」正成はいわざるを得なかった。「それまでを、たれにも阻める力はない。自分の一生は自分の創るもの」
「おことばを守って、いちばい勉強いたします。自分を作ることに励みます。母ぎみにも御心配をかけないように」
「やれ。それで思い残すところはない。母もさぞ、ほっとしよう。ぜひなくそなたを放したとはいえ、母の心も正成の心と違うてはおらぬはず。はやはや、今日は河内へ帰って、なぐさめてお上げせい。わけて正成が亡い後は、世にひとりの母。また、そなたは、幼い弟たちの兄でもある。たのむぞよ、正行」
「はい……」
と、多感な子はまたすぐ涙を催しかけた。が、そこへ兵糧の朝餉が運ばれて来たのを機に、正成はそれ幸いに、さいごの貧しい野戦食を正行と向いあって摂りながら、幕舎の外へ命じていた。
「たれかある。正季のとばりへ参って、正季を呼んでこい」
「おめしですか。兄上」
「正季か。ま、坐れ」
と、正成は、楯の座のしとねを分けて。
「正行のことだが」
「そのことでは、私からも申しあげねばなりませぬ。じつは御出立のあと、余りの不憫さ、また健気さに、これまでお連れして来ましたが、やはりお供はおゆるしないそうで」